時空を超える金物屋さん?

umegasane2008-05-11

近くの商店街には、かなりレトロ、、というか古びたお店が並んでいます。錆びたシャッターにかすれた文字、しかも書かれた電話番号は今より一ケタ少なかったり。そんなシャッターを半分だけ開けている金物屋さんに、なんでか今日はふらりと入ってみたくなりました。薄暗い建物の中からは意外にも人の話し声が聞こえて、それに引き寄せられるようにふうっと一歩、お店に足を踏み入れてみました。変な金具がいっぱい。。。正面に白髪の小さなおじいさんがひとり。目で一瞬こちらを見ただけで、おしゃべりを続けていました。奥に誰かいるみたい。錆の出た黒い鉄の陳列ケースは、ほこりでガラスが曇って中がよく見えません。細かく仕切られた壁一面の木の棚にはぴかぴかの左官こてや色褪せたパッケージのはさみが並び、天井からは銀や黒の鎖がぶらさがってました。しっかり埃の乗った薄グレーのビニール袋の中にはなんとなく見たことがあるような無いような金具が入ってます。なんじゃこのお店は。。。棚とおじいさんは時代に取り残されたようなアンティークっぷりです。新旧入り混じる金具で溢れかえった店内は、半世紀前と現在の繋ぎ目みたいで、クラクラしました。
お店のおじいさんは、私が金具を手に取るたび、ひとつひとつ丁寧に嬉しそうに説明してくれました。これは取っ手なんだけど、こうひっくり返ってね、だから取り付けるときには戸の木を削らないといけないんだけど、ほら、こうすると、平らになるから邪魔にならなくていいんですよ、とか、これは引き出しの取っ手ですよ、木の裏で金具を開いて取り付ける型でね、でもただの味気ないやつじゃなくて「ぶら」がついてるでしょ、ちょっとおしゃれに出来てるんですよ、とか。昔の家で見たことがあるような懐かしい金具があちこちに隠れてて、タイムスリップしたような気持ちでそれらの説明を聞いてました。
買ったのは、ナゲシに引っ掛けて使うフックと、床の間用のかけ釘。どちらも今の家では使いません。でもでも、釘で固定しないでどこにでも引っ掛けるだけでOKなフックは柔らかい曲線が優しげで、逆に床の間用のかけ釘はカクカクと90度で折れ曲がった直線的なフォルムが潔くてカッコよくて、つい買ってしまいました。
次に行ったときには消えていて、あれは夢だったんじゃないだろうか、ってよくある話に出てきそうな、不思議なお店でした。