羽化の瞬間

去年庭で保護したアゲハは2匹。一匹は先日無事羽化したのですが、もう一匹が、心配。
蛹の色が変わり始めたのがおとつい。翌日は雨の予報です。このまま羽化すると、初フライトが土砂降りの中か、一日食べ物もない家の中か、どちらかになってしまう。。しょうがない、苦渋の決断で洗濯物干しに蛹の付いた枝をぶら下げて仕事に行ったのが昨日。そこから、蛹に変化がありません。羽化の直前まで発生は進んでいたはずなのに、いくら雨だからって、寒かったからって、まる一日以上羽化が延期されるなんていくらなんでもおかしい。。。羽化にはものすごいエネルギー使うし、ちょっとしたことで羽化は失敗するリスクもあるし、なによりこの蛹ちゃん、私がうっかりぽと、って落としちゃったことがあるし(泣)。二匹目のアゲハは見られないかもしれない。ぴくりとも動かなくてただ色だけは真っ黒に羽が透けて見える蛹を朝から何度も見つめ続けましたが。。昼前になっても変化無し。ちょっと諦めかけていた頃に、ぱり、ぱり、、と薄い枯葉を踏むような音がして、なんで私の他に誰もいないのに?。。。 !
アゲハが蛹を破って出てくる音でした。軽い、乾いた、ぱり、ぱり、という音と共に、するすると事もなげにアゲハは蛹から出て木の枝をよじ登り、蛹から完全に出た所ですぐ羽を伸ばし始めました。なんてあっけない! ものの1分もかかってないんじゃ。。羽化ってもっと、こう、ビックイベントだと思ってたし、だから長い時間がかかってやっと、、、みたいなものだと思ってたのに。ちょっと目をそらした隙にもう上半身は蛹から出ちゃってたし、そこから全身が出るまでは本当にあっという間でした。長く細い脚が、ちょこちょことこそぶるように動いて枝を登り、すぐにふっと止まる。そこからはひたすらじいーーーっと、羽を伸ばしていました。お腹が細かく震えていました。力入ってるんだろうなあと思いながら眺めていると、このアゲハは前に羽化したアゲハとはなんか違う。口吻を、ゆるめたりきゅっと丸めたり、えらく頻繁に動かしてる。緩めた口吻が大きな円を描いてて、その中で口吻の先端がぺろぺろぺろぺろ、ずっとせわしなく動き続けてます。何かを探すような動き。。ひょっとしてお腹が空いてるんだろうか、落ち着きがちょっとないのかも、このアゲハは女の子かも、なんて想像しながら、蝶を見てました。ふさふさの毛が胸から腹にかけて光ってました。触角ってすんごい力強い。眼は静か。写真で見る蝶の眼ってすごい気が強そうなのに。
一時間以上かけて羽を伸ばしたアゲハを庭に出して、飛び立つまで見てました。何度か羽をゆっくりぱたん、ぱたん、と開いたり閉じたりし、しばらくじっとして、また羽ばたきのようなことをして、とまって。蝶でも初めて飛び立つのは怖いんだろうか、ためらっているように見えました。羽ばたきを繰り返しながら徐々に木の枝を登ってきて、枝のてっぺんに着くと羽の動きが早くなりました。私の指を枝の上に置くと、アゲハは指にゆっくり移りました。そのままゆっくり自分の膝の間に手を置いてアゲハを斜め上から眺めていると、私の指からふうっと飛んでいきました。なんて軽くて、柔らかい。。。蝶ってこんなだったっけ。この感覚、これが蝶なんだなあ。。。